特集
2018年1月10日
受験本番に向けて、日々緊張感が高まっていく受験生。そんな受験生を前に、親も不安を感じたり、子どもにどのようなケアをしたらよいのか迷ったりしてしまうことも。ウーマンウェルネス研究会が、この2年以内に子どもの受験(中学・高校・大学)を経験した母親551名を調査したところ、受験本番で子どもが緊張していたと感じた母親が62%、さらに自分自身も緊張したという母親が73%に上りました。
母親からすると、子ども以上に自分自身が緊張を覚える受験。さらに調査を進めると、母親が緊張するほど、子どもの緊張度が高まる傾向にあることがわかりました(図①参照)。
図①
母親の緊張が子どもに伝わって、子どもをますます緊張させているとしたら本末転倒。“ビリギャル”(「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」)の著者で1,300人以上の生徒を指導してきた坪田塾の塾長 坪田信貴先生もこう警鐘を鳴らします。「子どもが緊張するかしないか、実力発揮できるかどうかは、親次第。親が“子育てがすべて、受験勉強がすべて”になってしまうと、うまくいかないことが多いです」。
【受験本番や模試での“緊張”の原因】
①親が受験を特別視してしまう
親が「この1回で人生が決まる」と受験を特別視してしまうと、子どもに過度な緊張を与えてしまいます。子どもは「この受験に落ちたら大変だ」と感じてしまい、余計に緊張が増して実力が発揮できなくなってしまいます。
②家族の過剰な気づかい
受験生にとって、親やまわりが「いつもと違う」ことで緊張します。
③受験の雰囲気・会場に慣れていない
試験会場には塾や学校の先生とは違う試験官がいて、まわりの受験生も緊張感を漂わせています。そうした独特の会場の雰囲気にのまれ緊張してしまいます。
④緊張のため体調が悪くなり、より緊張する
緊張によって、体調が悪くなってしまう場合も。体調がいつもと違うことで、さらに緊張が増してしまいます。
「子どもの受験期間中でも自分のやりたいことがちゃんとできている親御さんは、いい親子関係が築ける傾向に。親子が適切な距離感で、コミュニケーションを取れていることがベストです」と坪田先生は言います。
「子どもの緊張をほぐすためには、とにかくふだん通りに生活することが大切。なるべくポジティブな言葉をかけたり、リラックスを促したりすることを心がけましょう!」。
【受験直前対策:子どもの緊張をほぐす方法とは?】
①親が受験を特別視しない
「受験で人生が決まるわけではない」「受験なんかたいしたことない。気楽にやりなさい」と大きく構え、親自身がリラックスする
②ふだんと同じ、バランスのよい食事
ゲンかつぎで普段と違う油っぽい食事をとらせてしまうと、消化不良で逆に調子が狂うことも。非日常が、逆に緊張させてしまうので、まわりも子どももふだん通りに過ごすことが大切。
③「ホープアピール」
明るい未来を想像させる声かけを。「受かったら●●に旅行しようね」「●●でランチしたいね」など。「落ちたらどうするの」「落ちても浪人させないよ」 失敗を前提とした「フィア(恐怖)アピール」はNG!
④リラックス習慣とポジティブな声かけを
お休み前にホットアイマスクを使用するなど、日ごろから“これを使えばリラックスできる”というアイテムをもっておくと◎。受験前日も同じように過ごすと心が軽くなります。
また、親子で「おつかれさま」「がんばっていて偉いね」「生まれてきてくれただけでありがとう」などの声かけをするのもおすすめ。
受験本番に近づくと緊張が悩みとなる一方で、受験の1年前の時点では、70.3%の母親が自分の子どもに対して「緊張感が足りなかった」と感じています。坪田先生は、親から見て、子どもが受験1年前には緊張感がないように思えるのは理由があると言います。
「社会経験のある大人と違って、子どもは時間感覚が身についていないので、直前まで行動を起こさないのです。ただ、1~2年も前から自分と同じように緊張感を持つことを求めてしまうのはNG。理想は、リラックスしながらやるべきことをちゃんとやるという、“ほどよい緊張感”をもつことです」。
ほどよい緊張感には「時間感覚」と「タスク把握力」が最も重要です。ゴールは子ども自身が「時間感覚」と「タスク把握力」を身につけること。そのために初めは親がタスク管理に協力を。「いつまでに、何を、どれくらい」を一緒に把握し、計画を立て、計画通りにこなしているか進捗をチェックしましょう。
(例)
・英単語の本4冊を12か月で覚える→2日に1回、10単語ずつ覚える、など細分化する計画を立てる
・その日のタスクが終了したら、カレンダーに花まるをつける などで進捗を見える化
【タスク管理をするメリット】
①やるべきことが明確になり、子どものモチベーションが上がる
②親が子どもの勉強の進捗状況を把握できるので、親も安心できる
③決めたタスクさえこなせば、ほかの時間は自由にできるので、ふだんからコツコツ勉強をする習慣がつく
④受験本番でもタスク管理能力を生かせる
(試験問題の全体をさっとチェック、わからない問題はあとまわしにし、あせらない)
ほどよい緊張感を保つためには、適度にリフレッシュやリラックスをしてメリハリをつけることが大切。手軽に使えるホットアイマスクは、短時間でのリフレッシュやリラックスにおすすめ。昼食後にはメントール入りのアイマスクで気分をリフレッシュし午後の勉強に集中、1日の終わりには、香り付きのアイマスクなどでリラックスするなど、上手に活用しましょう。
坪田信貴さん
坪田塾塾長。累計120万部突破の書籍『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称ビリギャル)や累計10万部突破の書籍『人間は9タイプ』の著者。これまでに1300人以上の子どもたちを子別指導し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。大企業の人材育成コンサルタント等もつとめ、起業家・経営者としての顔ももつ。テレビ・ラジオ等でも活躍中。新著に『バクノビ —子どもの底力を圧倒的に引き出す339の言葉』がある。
<調査概要>
調査方法:インターネット調査
調査期間:2017年11月27日~28日
調査対象:東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)および、大阪府、愛知県の6都府県の、2年以内に子どもの受験(おもに中学・高校・大学)を経験した母親551名
調査内容:“受験時の子どもの緊張感”に関する意識調査
写真:PIXTA