特集
2018年7月4日
監修:中城歯科医院 医院長 歯学博士 鍼灸師 中城 基雄先生
起床後や会話中などに、「口臭」が気になることはありませんか? ウーマンウェルネス研究会が全国の20~50代の男女871名を対象に口臭に関する意識調査を実施したところ、自分の口臭に不安を感じる人は8割を超えることがわかりました。
自分や他人の身体のにおいで気になるのは「口臭」と回答した人が最も多い結果に(グラフ①参照)。
グラフ①
9割を超える人(90.6%)が「他人の口臭が気になったことがある」と答える一方、相手に伝えたことがある人は3割強(34.8%)にとどまっており、口臭が指摘されにくい現状にあることがわかりました。
また、スマートフォンを長時間使用している人ほど、口臭の自覚経験率が高いことも明らかとなりました(グラフ②参照)。
グラフ②
口臭治療の専門家であり歯学博士の中城基雄先生は、口臭の原因、とりわけ昨今注目されている“スマホ口臭”と“お口の加齢臭”について、次のように話しています。
「口臭には、歯周病や糖尿病などの病気によって起こるものもありますが、程度の差はあれ誰にでも病気によらない生理的口臭があります。これは口腔内に生息しているさまざまな菌が食べカスなどを分解するときに発生するにおいです」
生理的口臭が発生しやすい場所は、ケアをしにくい「舌」。ほとんどの人の舌の上には、舌苔と呼ばれる白っぽい苔のような菌のかたまりがついています。通常は唾液の働きで菌が流され、口腔内は清潔に保たれます。しかし、唾液が減少すると菌がかたまりやすくなり、不快なにおいの原因ともなる「スカトール」などの悪臭成分が発生してしまいます。そのため、唾液が少なく舌苔の量が多い人ほど、口臭が強くなりやすい傾向にあります(イラスト①参照)。
イラスト①
舌苔についてはこちらでくわしく説明しています。
IT化にともなう”スマホ口臭”の増加
唾液が少なくなる原因のひとつとして、近年急激に普及したスマートフォンの使用が考えられます。一般的にスマートフォンを使用する際、
唾液腺を圧迫するうつむき加減の姿勢
顔の筋肉を動かさないことによる咀嚼筋のこわばり
スマートフォンの画面に集中することで続く緊張状態
などの悪条件が重なり、唾液の分泌が減少し、口臭が発生するリスクが高くなります。スマートフォンの使用機会が多い現代のライフスタイルにおいて、“スマホ口臭”は見過ごせない状況にあります。
40代以降は”お口の加齢臭”にも注意
年齢を重ねるにつれてさまざまな原因が重なり、唾液分泌量が減少する傾向にあるため、口臭の不快度が増しやすい傾向に。40代後半になると、「社会的容認レベル(50cm程度の距離で口臭が感じられない状態)」を超える人が増えます(グラフ③参照)。
グラフ③
最近の調査では、口内において、不快なにおいの原因となる成分「スカトール」が40代以降に急激に増えることが分かっています(グラフ④参照)。
グラフ④
身体の加齢臭が気になる年代になってきたら、口臭にも注意しましょう。
①泡ハミガキを舌に直のせして舌苔ケア
口臭を抑えるには、舌の上にある菌のかたまり(舌苔)を取り除くことがポイント。ただし、歯ブラシや舌ブラシでゴシゴシこすると舌が傷つく恐れがあるため、泡タイプのハミガキを使うのがおすすめ。泡はきめ細かいほどよごれを吸着しやすい性質があります(グラフ⑤参照)。
グラフ⑤
きめ細かな泡を舌に直のせすることで、ふだんの歯磨きで舌の上を洗浄し、自然に舌苔をケアすることができます。最近では、舌の上の菌のかたまりに着目して開発された泡ハミガキもあります。
②スマホ口臭には背伸びと舌の体操を
スマートフォンやパソコンを長時間使うときは、唾液腺をほぐすためのかんたんなストレッチをしましょう。30分に1回はあごを上げて背伸びをし、かたまった顔の筋肉をほぐします。同時に、舌を少し出し、右回転・左回転それぞれに12回、唇をなめるようにぐるぐる回すと、唾液の分泌がより促されます。加齢や緊張で口が渇く時も同じ方法で口の中をうるおすことができます。
このほか、唾液腺マッサージもおすすめです。
③朝食はよく噛んで唾液を分泌
寝ている間は唾液が分泌されず、口腔内で菌が繁殖しやすい環境になるため、起床時には口臭が強くなりがち。よく噛んで咀嚼筋を動かしながら朝ごはんを食べ、口の中をうるおしましょう。また、食物繊維を含んだものをよく噛んで食べ、腸内環境を整えることも口臭対策のポイントです。
中城先生によると、「自分の口臭は自分ではなかなか気付けないものです。これは、自分が発しているにおいを常に感じていると、ほかの生きもののにおいが感じられなくなってしまうから。これは、自然界で生き延びるために古代からの習性として備わっているものです」
現在の生活習慣が、自分ではなかなか気付けない口臭リスクにつながることもあります。以下のリストで、口臭リスクをチェックしてみましょう。
【口臭リスクチェック】
実際に自分の口臭をチェックしたい場合は、湿らせたガーゼで舌の上をやさしくぬぐい、袋に密閉して半日おいてからにおいをかいでみましょう。人が感じるにおいと近いにおいを感じることができます。
<意識調査概要>
調査方法 : インターネット調査
調査期間 : 2018年4月13日~4月18日
調査対象 : 全国の20歳~59歳の男女871名
調査内容 : 口臭に関する意識調査
写真:PIXTA
歯周病・むし歯・口臭