からだケアレシピ
2018年7月4日
中城歯科医院 医院長 歯学博士 鍼灸師 中城 基雄先生
鏡を見ながら、舌をベーッと突き出してみてください。舌の中ほどからやや奥のほうについている白いもの、これがイヤ〜な口臭を発生させる原因「舌苔(ぜったい)」です。
口の中で悪臭を発生させるもの…その正体は「菌」でした。
菌は大きく分けて、酸素のあるところで生育する「好気性菌(こうきせいきん)」と、生育に酸素を必要としない「嫌気性菌(けんきせいきん)」の2つのタイプがあります。このうち、イヤなにおいを発生させるのが嫌気性菌です。
嫌気性菌の格好のすみかが、舌に生えている細い繊維状の組織(糸状乳頭)の根元です。ここには酸素が届きにくいため、多くの嫌気性菌がすみ着いてかたまりをつくります。このかたまりが舌苔の正体です(図①参照)。
図①
口の中が健康な状態で充分な唾液量があれば、菌は唾液によって洗い流されるため、菌が増え過ぎることはなく、舌苔もそれほどたまりません。でも、加齢やストレスなどによって唾液が減少すると、菌がかたまって増殖し、舌苔が増えます。こうして舌苔が増えれば増えるほど、口臭も出やすくなるのです(図②参照)。
図②
嫌気性菌は食べカスなどを餌として、「揮発性硫黄化ガス」を発生させます。これが口臭の原因。口臭には、イオウ臭、生ゴミ臭、金魚鉢臭などさまざまなタイプがあり、どんなにおいが出るかは、それを発生させる人の体質や年代によって異なります。
年齢を重ねるにつれて口臭の不快度は増す傾向にありますが、その原因のひとつは「スカトール」というにおい物質。おならやウンチのようなにおいにも含まれるスカトールは、年齢とともに増す傾向があり、舌苔が多いほど発生しやすいことがわかっています。
口の中が健康であれば、舌には白い舌苔がうっすらとついています。それが白く、分厚くなるにつれて、口臭が発生しやすくなります。さらに進行すると、舌苔は黄色っぽくなり、しまいには黒っぽく変色し、スカトール臭もしだいに強くなります。舌苔の色が黄色から黒に変わるのは、菌のかたまりが増えるからです。
舌苔をうまく取り除くと嫌気性菌が減るため、口臭が抑えられます。ただし、ゴシゴシこすり落とそうとすると、舌が傷ついてしまいます。たとえば、しょうゆなどの調味料が舌にしみるほどこするのはNG。
舌のケアには、次のような方法がおすすめです。
・泡ハミガキ
泡タイプのハミガキを使います。きめ細かな泡を舌に直のせして、クチュクチュして口全体にいきわたらせた後、通常の歯磨きを行います。泡にはよごれを吸着しやすい性質があり、泡がきめ細かいほど泡の表面に多くの菌を吸着することができます。泡タイプのハミガキは、通常の歯磨きではたてることのできないきめ細かな泡ができるので、舌苔ケアに有効です。最近では、舌の上の菌のかたまりに着目して開発された泡ハミガキもあります。
・やわらかい布で拭き取る
メガネ拭きに使うような、マイクロファイバーなどのやわらかい布を指に巻きつけ、舌苔をやさしくこすります。回数は1日1回程度まで。
ニンニク入りのパスタやギョウザのにおいを思い出してみてください。けっして悪臭ではなく、むしろ食欲をそそる良いにおいです。でも、ニンニク料理を食べた後は誰でも強い口臭を発します。その理由は、ニンニクに含まれる「アリシン」という成分をもとに、口の中の嫌気性菌が悪臭のもととなるガスをつくり出すからです。菌の数が多ければ、それだけガスの発生量も増えてしまいます。食後の口臭を抑えるためにも、舌をきちんとケアして菌が増え過ぎないように注意しましょう。
写真:Thinkstock / Getty Images
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