特集
2018年9月14日
医師、医学博士、健康科学アドバイザー 福田 千晶先生
仕事からプライベートまで、デジタル機器の使用が当たり前となっている現代。一方で、デジタル機器の使用によって疲れや不調を感じている人も多いのでは? ウーマンウェルネス研究会では、スマートフォンやPC、タブレット端末などの使用と心身の疲れに関する意識調査を実施しました。
スマートフォンの使い方について調査した結果、多くの人が休みなく使っているという結果に(グラフ①参照)。
グラフ①
また、約4割の人が寝る直前までスマートフォンを使用しており(グラフ②参照)、寝る前の使用により「朝すっきり起きられない」「身体がだるい」などの不調を感じている人が多いこともわかりました(グラフ③参照)。
グラフ②
グラフ③
「デジバテ」とは、当研究会が命名したデジタル機器との“つながりっぱなし”の状況が引き起こす、心身の不調の総称です。デジタル機器の普及により、多くの人が睡眠不満、翌朝の活力低下などさまざまな不調を感じていることが調査により明らかになりました。
くわしくは下記のリンクをチェック。
産業医として、働く人の健康を見守り続けている医学博士・健康科学アドバイザーの福田千晶先生は、「デジバテ」について次のように話しています。
『スマートフォンやPCの使用により、常に集中、緊張した状態が続きます。すると、交感神経が優位になり続けるため、リラックスしにくくなります。
24時間いつでも気軽に連絡することができる現代。デジタル機器の普及により生活は便利になったはずなのに、気づけば「デジタル機器に振り回される」生活になりがちです。「人とつながり続けてリラックスできない」「連絡がくるのではというプレッシャー」「他人と自分を比べて落ち込む」といったストレスを感じ、逆に心身に不便を感じる人は多いでしょう。心が疲れると、睡眠の質の低下や、疲れがとれない、頭痛、胃腸の不調など心身にさまざまな影響が出てきます』
自分では気づきにくい「デジバテ」ですが、ひとつの目安となるのが“目の開き”です。
看護師を対象に実験を行ったところ、疲労がたまっていると考えられる夜勤明けでは開眼度*が低く、疲労感スコアは高いということがわかりました(グラフ④参照)。
グラフ④
このことから、「疲労感が高くなると開眼度は低くなる」という関係性が明らかになったのです。
*開眼度・・・本来の黒目のサイズに対して、現在どの程度黒目が見えているかを表す数値のこと
また、オフィスワーカーを対象に一週間の開眼度を計測したところ、「金曜日に開眼度が低くなるタイプ」が最も多いという結果に(グラフ⑤参照)。約2人に1人が、金曜日には開眼度が低下していることがわかりました。
グラフ⑤
開眼度が下がりやすい金曜日や水曜日に、重点的にデジバテケアを実践したいものです。“デジバテ”の解消には、リラックスと充分な睡眠が重要です。重症化する前に、次の3つの解消法を実践してみましょう。
① デジタル機器の使い方を見直す
仕事でもプライベートでも欠かせないツールとなっているデジタル機器ですが、せめてプライベートの時間は、「寝る2時間前には電源をオフにする」「置き場所を決めておく」など、使用のルールを設けるとよいでしょう。
また、デジタル機器にはディスプレイを目にやさしい色合いに調節する機能がついているものもあります。自分のスマートフォンやPCを確認し、夜の使用の際にはこうした機能を活用しましょう。
② 目もと温めで、リラックス!
デジバテ対策のひとつとして効果的なのが「目もと温め」です。
オフィスワーカーを対象に、開眼度・疲労感・表情の実験を行ったところ、蒸しタオルで約10分間目もとを温めると、疲労感が軽減し開眼度も上昇することがわかりました(グラフ⑥参照)。
グラフ⑥
目もとには温度を感受する感覚神経が多く集まっています。心地よさを感じやすい約40℃前後の温熱で目もとを温めると緊張がほぐれ、日常生活をリラックスモードに切り替えることに有効です。
副交感神経活動が優位になるような、リラックスできる習慣を取り入れることは、質の高い睡眠にもつながります。
③ 頭皮のこりをほぐす
疲労がたまり、まぶたが下がると、まぶたを上げるために頭皮の筋肉に負担がかかります。頭皮のコリは頭痛を引き起こすため、手でマッサージしてこりをほぐしましょう。
<調査概要>
調査方法 : インターネット調査
調査期間 : 2018年5月11日~5月13日
調査対象 : 首都圏の20歳~49歳の有職男女643名
調査内容 : デジタル機器の使用と心身の不調に関する意識調査
写真:PIXTA