監修:泌尿器科医 医療法人LEADING GIRLS女性医療クリニックLUNAグループ理事長 関口 由紀先生
寒い季節は尿もれが起こりやすい時期。その原因についてお伝えします。
40~60代女性の3人に1人が経験するといわれる「尿もれ」。そのおもな原因は、出産、加齢、閉経などによって、「骨盤底」がいたんだり、ゆるんだりすることです。
これら3つのうち、とくに冬に起こりがちなのが、寒さや冷たさを感じたり想像すると起こる切迫性の尿もれです。冬は、寒さにさらされたり、室内外の温度差を感じたり、キッチンなどで水の冷たさを感じたりする機会が増えます。こうしたことが刺激になって膀胱が反射的に収縮し、尿もれしやすくなります。ただし、なぜ膀胱が反射的に反応するかなど、明確な理由はわかっていません。
女性の尿もれには、①妊娠・出産②加齢③閉経といったライフステージが大きくかかわってきます。
妊娠してお腹が大きくなると、普段よりも骨盤底に負担がかかります。また、産道を通り膣から赤ちゃんを出産する経膣出産のあとは、膣が大きく伸びて、骨盤底にダメージを与えます。そのため、出産後1年以内は尿もれしやすくなります。通常は1年ほどで改善しますが、骨盤底へのダメージは残ります。
歳を重ねるにつれ運動量が減り、筋力が低下すると尿もれが起こりやすくなります。腹圧性尿失禁のピークは60歳ごろですが、切迫性尿失禁は加齢とともに増える傾向があります。
50歳前後で閉経すると、コラーゲンなどが減り、皮膚や皮下組織がゆるんだりかたくなったりすることで尿もれが起きやすくなります。
このほか、肥満、便秘がち、トイレで何度もいきむ、たびたびせき込む、重いものを持つことが多いといったことも、骨盤底にダメージを与える要因になります。
一度尿もれを経験すると、「またもれるのでは」と心配になり、外出をひかえたり、趣味をあきらめたりしがち。そうなると活動量が減って筋力が低下し、さらに尿もれしやすくなるという悪循環に陥ってしまいます。また、「膀胱は心の鏡」というように、外出や趣味を止めることで感じるストレスも尿もれの一因になってしまいます。でも尿もれは、一度経験したからといって、ずっと続くとは限りません。生活習慣を見直したり、骨盤底を鍛えたりすることで、尿もれは予防や改善ができるのです。
大切なのは、心や身体をリラックスさせること。そして、尿もれが心配なときは尿もれ専用パッドを使い、外出や趣味、スポーツを楽しむこと。活動的な生活を心がけることで、筋力を維持し、ストレスをためずに済むので、尿もれの予防・改善につながります。