監修:東京マインドフルネスセンター センター長 長谷川 洋介先生
ストレスの多い現代……「目もとを温めること」は、簡単で即効性のあるリラックス法です。ここでは、その理由とポイントをみていきましょう。
目もとには、自律神経の働きを切り替えるスイッチがあるため、目もとを温めると、三叉(さんさ)神経(感覚神経)が刺激され、交感神経が優位な状態から、副交感神経が優位な状態に変わり、リラックスできるのです。
40℃の蒸気による目もと温めを体験した人にアンケートを取ったところ、「頭のスッキリ感」「爽快感」などの感想があり、「全体的な疲労感」は目もと温めの前後で減少しています(グラフ①)。目もとを温めることはリラックスに大いに有効です。
人間の皮膚には、心地よい温度を感じるセンサーが備わっています。このセンサーを調べることで、身体が心地よさを感じる“快適温度”は約40℃であることがわかりました。この温度で温めると、副交感神経が優位になり、リラックスできます。これより温度が低くても高くても、心地よさが低減してしまいます。また、温度が高すぎると、交感神経が優位になってしまい、リラックスには逆効果です。
蒸気を含んだ熱のほうが乾いた熱よりも、身体に深く広く伝わるため、高いリラックス効果が期待できます。蒸しタオルやホットアイマスクを使って、目もとをじんわり温めましょう。
実際に40℃の蒸気で目もとを10分間温めてみたところ、心と身体に2つの変化が起こりました。
目に光を当てると、反射的に瞳孔が縮まります。この現象を「縮瞳(しゅくどう)」といいます。縮瞳には、自律神経の働きが影響しています。副交感神経が優位な場合(つまり、リラックスしているとき)は、瞳孔がより小さく縮まります。逆に、緊張状態のときは交感神経が優位なので、瞳孔の大きさはあまり変わりません。
目もとを温める前と比べ、40℃の蒸気で、たった10分間温めただけで、縮瞳率が増加しました。このことから、温める前と比べて、副交感神経の働きが優位になり、リラックスできたことがわかります。(グラフ②)
目もとを温めると副交感神経が優位になるため、手足の血管が広がり、身体の末梢まで血液が充分にいきわたります。サーモカメラでみると、目もとを温める前と比べ、温めた後は目のまわりだけでなく、指先まで温まっていることがわかります(図➀)。
人差し指の温度が約1.6℃上昇しました。これは、交感神経の働きを抑えたことで、副交感神経が優位になったためと考えられます。
身体が疲れたり、だるかったりするときはもちろん、ちょっぴりイライラ、どんよりしているときも、手軽に使えてすぐに効果が実感できる目もと温めを取り入れてみてはいかがでしょう。