監修:帝京大学ちば総合医療センター 耳鼻咽喉科 教授 鈴木雅明先生
風邪やインフルエンザが気になる季節の到来! 実は寝ているときの「あること」が、風邪やインフルエンザにかかるリスクをぐんと高めるのだそう。どんなことに気をつければ身体を守れる? 睡眠時呼吸障害や口呼吸に関する研究で国内トップレベルの実績をもつ、帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科の鈴木雅明先生にお話をうかがいました。
人本来の自然な呼吸は「口呼吸」ではなく「鼻呼吸」です。
鼻には、①鼻腔粘膜に生えている線毛の運動によってウイルスや細菌などの異物を排出する働きや、②鼻腔の中で外気を加温・加湿する働き、③温められ、加湿された空気をのどを通して肺に届ける働きなどがあります。きちんと鼻呼吸していれば、風邪やインフルエンザにかかりにくくなるのです。
しかし、冬は年々乾燥が進み、全国的にも都市化が進んでいる地域ほど、乾燥環境が過酷化しています。東京では、冬の空気中の水分量が20年前の約8割まで減少しています。また、花粉の飛散量も、昔に比べて増えています。こうした乾燥や花粉といったさまざまな環境ストレスにさらされることで、現代人は鼻がつまりやすく、口呼吸になってしまう傾向にあるのです。
口呼吸になると、ウイルスや細菌が鼻の線毛運動で取り除かれずダイレクトにのどまで届くことや、取り込んだ空気が加温・加湿されないことでのどが乾燥し、ウイルスや細菌が活性化しやすくなることなどから、風邪やインフルエンザにかかるリスクがアップします。
1日の中でも、自分でコントロールできない睡眠時はとくに口呼吸になりやすいため、注意が必要です。
睡眠時に鼻がつまって口呼吸になると、のどがつぶれやすくなり、いびきや無呼吸が生じやすくなります。すると、脳の中枢から「呼吸が正常でない」という指令が出て覚醒反応が起こるため、睡眠の質の低下を招きます。
質の高い睡眠が十分にとれないことは、免疫力の低下にもつながり、さらに風邪やインフルエンザに感染しやすくなるという悪循環を招くことにも…。
睡眠時に口と鼻、どちらで呼吸しているのかは自分ではわからないもの。以下のチェックリストに当てはまる項目があったら、あなたも寝ているときに口呼吸をしている可能性があります。
睡眠時にのど・鼻を加温・加湿して、口呼吸リスクを防ぎましょう。鼻通りがよくなり、睡眠の質が高まります。鼻の中の線毛運動も活発化するため、風邪やインフルエンザの予防効果も期待できます。上記のチェックリストなどで「睡眠時に口呼吸をしているかも…」と思った人は、就寝前に以下の方法を試してみましょう。
マスクをすると、自分の呼気で鼻やのどの乾燥を防ぐことができます。加湿機能つきのマスクを活用してもよいでしょう。
蒸しタオルを鼻の上に置き、蒸気で温めながら加湿するのがおすすめです。鼻づまりが軽減し、鼻からゆっくり深く呼吸できるようになります。鼻の線毛運動が活発になって、ウイルスや細菌などの異物を排除する働きも高まります。
人差し指で右の鼻を押さえ、左の鼻から深く息を吸ってゆっくりと吐きます。次に左の鼻を押さえ、同様に右の鼻で深呼吸します。左右交互に5セット行いましょう。