まもなく、風邪やインフルエンザをはじめとする感染症の流行が心配な冬がやってきます。どうすれば、その脅威から子どもたちを守ることができるでしょうか? 聖路加国際病院 小児科医長の草川 功先生に、子どもと一緒に習慣化したい6つの感染症対策を教えてもらいました。
冬に向けて、新型コロナウイルスの感染拡大が再び懸念されています。そもそも、風邪やインフルエンザをはじめとする多くの感染症は、なぜ冬に流行しやすいのでしょうか?
気温が低くなると、免疫力が低下しやすくなります。また、乳幼児のころは暖房をつけた室内から外に出るときに、寒さを感じたら防寒をする…というような対策を自分ですることができないため、気温の低下や室内外の寒暖差の影響を受けやすいといえます。
気温の低下に加え、湿度も下がる冬は、ウイルスが飛沫となって飛びやすくなります。さらに、暖房によって室内の空気の乾燥が加速します。のどが乾燥することで、ウイルスが体内に侵入し、増殖しやすくなります。
冬は、暖房をつけて、室内を密閉しがちです。その結果、換気が行き届かず、空気が滞ってしまうほか、私たち自身も寒さから狭い空間に集まりがちであることもまた、流行を加速させる原因になります。
子どもを感染症から守るためには、まずは大人が日ごろからしっかり対策を行うことが大事です。子どもは大人の姿を見て、健康管理の意識をはぐくむからです。
乳幼児のころは大人の積極的なケアが必要ですが、大人が感染症対策をし、一緒に行うよう促していれば、3~4歳ごろから手洗いなどの行動を習慣化することができ、小学校の中高学年になるころからは、感染予防の意味を理解した上で、自ら予防行動が取れるようになります。子どもは学校などの集団生活の中で、いつどこで感染するかわからない、マスクや手洗いといった大人にとって当たり前の行動がなかなか身につかない、といった不安を抱える親御さんも多いと思います。まずは、子どもと一緒に取り組める対策を習慣化するよう意識してみましょう。
では、子どもと一緒にどのような感染症対策を行っていけばいいのでしょうか? 無理なく習慣化させるためには、冬場だけでなく、年間を通して行うことをおすすめします。
規則正しく生活し、栄養バランスよく食べて、十分な睡眠を取るようにしましょう。体力の温存や免疫力の維持が期待できるため、感染症にかかりにくくなり、かかったとしても症状が軽くすむようになります。また、規則正しい生活をしていると、異常があったときに気づきやすくなります。
外から帰ってきたとき、食事の前、トイレの後などのタイミングに、しっかり手洗いをするようにしましょう。子どもにはその都度声をかけ、一緒に手を洗うことで、習慣づくようになります。
毎年、10月ごろからインフルエンザの予防接種がスタートします。流行がはじまる前の11月ごろまでに、家族そろって受けるようにしましょう。感染を完全に防ぐことはむずかしいですが、重症化するリスクが低下します。また、集団で接種すれば集団免疫がついて、流行自体が広がりにくくなります。
のどが乾燥すると、ウイルスが体内に侵入し感染しやすくなります。いちばん乾燥しやすいのは、朝起きたときと、昼寝が終わったときなど。うがいや、むずかしければこまめに水分をとるようにして、のどのうるおいをキープするようにしましょう。
子どもに「なぜ、マスクをつけることが大切なのか」を説明しながら、大人も一緒にマスクをし、習慣化するようにしましょう。乳児、幼児前半まではなかなかマスクの重要性を理解できず、嫌がってしまうかもしれませんが、理解できるようになれば、自分から嫌がらずにつけてくれるようになります。
唾液には、乾燥やウイルスからのどを守る働きが備わっています。唾液分泌を促すために、まずは大人が唾液腺マッサージで感染予防を心がけましょう。
また、炭酸発泡するタブレットをなめるのもおすすめです。炭酸発泡による刺激は、インフルエンザウイルスの侵入を防御する作用が高い“良質な唾液”を分泌させるのを助けることがわかっています。
これらの6つの対策は、意識して習慣化することが大切です。この冬を乗りきるために早速取り組んでみましょう。