監修:医師、医学博士、健康科学アドバイザー 福田千晶先生
風邪やインフルエンザなどの感染症が流行する季節の到来。新型コロナウイルス感染拡大の影響が気になる今年は、いつも以上に念入りに対策したいですよね。ワクチン接種、マスク、手洗いのほか、どんな方法が有効なのでしょうか? 医師、医学博士、健康科学アドバイザーの福田千晶先生に、今年の冬に加えたい“感染症対策の新習慣”を教えてもらいました。
風邪やインフルエンザは、口や鼻から入ったウイルスが「のどの粘膜」に吸着することで感染するのですが、通常、のどの粘膜はウイルスが吸着しないよう、「線毛」「粘液」「唾液」の働きによって守られています。すなわち、のどには本来、ウイルスをバリアする機能が備わっているのです。
この「ウイルスバリア」が充分に機能するのは、のどがうるおっているときです。ところが今年の冬は、例年以上にのどが乾燥しやすい条件がそろっているといいます。
今年は新型コロナウイルス感染症対策のために、マスクをする生活が続いています。マスクは本来、のどの乾燥を防いでくれるものですが、状況によってはなんとなく息苦しくて、口呼吸になってしまう場合も。口からダイレクトにたくさんの空気が入ると、のどが乾燥してしまうので注意が必要です。
また、マスクをしていると口の中が湿っているため、のどの渇きを感じにくく、水分補給のタイミングを逃してしまうという落とし穴も…。マスクをしているときはいつもより大きな声を出してのどを酷使するので、そのことも乾燥につながると考えられます。
今年の冬は、新型コロナウイルス感染症対策として、加湿器をつけていても換気を頻繁にすることになります。そのため、加湿効率が悪くなります。職場や、子どもがいる学校・幼稚園・保育園、高齢者がいる施設、電車などの公共交通機関、ご家庭など、さまざまな場所で、空気が乾燥しやすくなる条件がそろっているといえます。
また、人は緊張したりストレスがたまったりすると、唾液の分泌量が減ってしまいます。今年は年間を通していつもと違う過ごし方を余儀なくされたため、多くの人がストレスを抱えて、唾液分泌量減少による慢性的なのどのうるおい不足に陥っているかもしれません。
今年の冬は、ワクチン接種、手洗い、栄養バランスに気を配るなどのいつもの感染症対策に加えて、のどの「ウイルスバリア」をしっかり機能させるために、のどを乾燥から守ることを意識しましょう。こまめな水分補給に加えて、唾液の分泌力を高めることが大切です。
ガムやあめ、タブレットをなめると、唾液の分泌が促されます。なかでも口の中で炭酸発泡するタブレットは、炭酸刺激がのどの「ウイルスバリア」力を高める“良質な唾液”を分泌させるのを助ける働きがあるのでおすすめです。口の中に入れるだけなので、電車に乗るときや人混みに行くときなど、マスクをはずしづらく、水分補給もしづらい生活にも取り入れやすいでしょう。
「乾燥しているな」「乾燥しそうだな」と思ったときは、唾液腺マッサージを行いましょう。耳下腺・顎下腺・舌下腺の3か所を指で押すだけなので、いつでもどこでも、気づいたときにかんたんにできます。受験生がいるご家庭では、子どもの勉強の休憩時間に、家族みんなで行うのを習慣にするとよいでしょう。
舌を口の中で動かすと、唾液が出るきっかけになります。マスクをしていても手軽にできるので、「乾燥しているな」と気づいたときに舌を動かしましょう。