監修:帝京大学ちば総合医療センター 耳鼻咽喉科 鈴木 雅明先生
風邪やインフルエンザなどの感染症が心配な冬。日中はしっかり対策していても、就寝時は無防備になっていませんか? ウーマンウェルネス研究会では、いつも以上に気になる「のどや鼻の不調」について、首都圏在住の526人(20〜60代男女)を対象に意識調査を実施しました。
冷たく乾燥した空気を、口から直接のどに吸い込んでしまう「口呼吸」は、「鼻呼吸」と比べ、のどを痛める原因になり、風邪やインフルエンザなどの感染症、睡眠不全など、さまざまな健康問題を引き起こします。
調査では、就寝時の口呼吸を自覚している人が約60%、昨年と比べて13%増加していました(グラフ①)。寝ている間に口呼吸になっているサインのひとつ「起床時に口の中が乾燥している」と感じている人は約74%にのぼり、自覚がなくても睡眠時に口呼吸をしている人はさらに多いと推測されます(グラフ②)。
さらに、就寝時に口呼吸を自覚している人ほど風邪をひきやすいと感じていることが明らかとなりました(グラフ③)。
この冬は、外出時に約93%の人がマスクを着用しています(グラフ④)。マスクを着用すれば、のどや鼻の乾燥を防ぐことができるため、日中は乾燥対策が結果的にできていることになります。その一方で、就寝時には約62%もの人が全く乾燥対策を行っていないという結果に(グラフ⑤)。就寝時は、乾燥に対して無防備になっている状況が明らかになりました。
こうした結果を踏まえ、口呼吸のリスクについて、国際レベルの研究実績をもつ帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科の鈴木雅明先生にお話を伺いました。
本来、人の呼吸は鼻呼吸ですが、乾燥や低温、花粉などの環境ストレスによって鼻がつまると、口呼吸になってしまいます。口呼吸をすると、異物やウイルス、細菌などが鼻の粘膜で除去されず、直接体内に入るため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかる危険性が高くなります。感染症全般の予防対策として、口ではなく、鼻で呼吸することはとても重要です。
ところが今年は、新型コロナウイルス感染予防の影響で外出が少なくなり、人目を意識して表情をつくる機会が減ったことで、口もとの筋肉が緩みがちになり、口呼吸になりやすくなっていると考えられます。また、例年よりも「のどの不安」を感じて来院する患者さんも増えています。
眠っている間は筋肉が緩み、意識して口を閉じることができないため、どんな人でも口呼吸になりやすくなります。自覚がなくても、「朝起きたときに口が乾いている」「いびきをかいている」などの兆候があるなら、寝ている間に口呼吸になっているサインです。また、夜間は鼻炎などのアレルギー性の症状が悪化して、鼻づまりが起こりやすいことからも、口呼吸になりやすい時間帯といえます。
また、口呼吸をすることでいびきをかいたり、呼吸が途切れたりすると、脳から「呼吸に異常が起こっている」という信号が出て心身が緊張し、睡眠が疎外されてしまうことからも、口呼吸への対策が必要です。
口呼吸によるリスクを避けるため、就寝時にのど・鼻を加温・加湿しましょう。鼻通りがよくなって口呼吸を防ぐことができる上、睡眠の質も向上します。また、異物やウイルス、細菌などを除去する鼻の線毛運動が活発になるため、風邪やインフルエンザといった感染症の予防効果も期待できます。
就寝時に蒸しタオルを鼻の上に置き、温めるのがおすすめです。それが面倒なときは、マスクを着けて眠るのでもOK。加湿機能がついたマスクなら、さらに効果的です。
空気の乾燥を防ぐため、部屋全体を加湿しましょう。最近では、ウイルスやカビ菌などの有害物質や花粉などのアレルギーを引き起こす物質を抑制できる加湿空気清浄機もあるので、上手に活用するとよいでしょう。
人差し指で右の鼻を押さえ、左の鼻から深く息を吸ってゆっくりと吐きます。次に左の鼻を押さえ、同様に右の鼻で深呼吸します。左右交互に5セット行いましょう。鼻づまりが解消され、鼻呼吸優位の状態をつくっておくことができます。
温めた蒸気を吸入する試験用のシートを鼻から口にかけて装着し、40℃で加温・加湿したところ、加温・加湿をしていない場合に比べて、鼻からの呼吸量が有意に増加しました(データ⑥)。
また、就寝前に加温・加湿を行った場合、睡眠不全の症状が有意に改善しました(データ⑦)。
睡眠の質の指標であるPSQI*において、6以上は睡眠に問題があると言われていますが、加温・加湿を行っていない場合の平均値が6.5であったのに対し、加温・加湿を行った場合は5.7にまで下がりました。加温・加湿により鼻通りが改善し、鼻からの深呼吸に変化したためスムーズに呼吸ができるようになり、眠りの質が改善したと推測できます。
<意識調査概要>
調査方法:インターネット調査
調査期間:2020年11月4日〜11月10日
調査対象:首都圏の20歳〜69歳の男女526名
調査内容:のどや鼻の不調に関する意識調査