監修:統合医療医 東京有明医療大学 教授 川嶋 朗先生
少しずつ暖かくなり、新生活もスタートする春。新しい出会いや楽しいイベントもめじろ押しなのに、眠い、だるい、気分が落ち込む…なんとなく不調を感じたことはありませんか?
今年の春は、外出自粛や在宅勤務などの環境変化も影響しているかもしれません。
ウーマンウェルネス研究会では、首都圏在住の20〜59歳の男女に調査を実施。すると、約7割もの人が春の寒暖差による不調=「春バテ」を経験していることがわかりました(グラフ①)。
調査結果から、例年、季節の変わり目である春(3-5月)に、身体の不調を感じている人が約7割、精神面の不調を感じている人は約5割。また、いずれも男性よりも女性の割合が1割ほど高い結果となりました(グラフ①、②)。
さらに、「春バテ」の5大症状として、①だるさ ②気分が落ち込む ③疲労感 ④イライラする ⑤倦怠感 が挙げられます (グラフ③)。春先にこれらの症状を感じたら、それは「春バテ」かもしれません。
「春バテ」を引き起こす原因は、大きく分けて3つあります。
春は、1年の中でもとくに寒暖差が激しく、身体が寒暖差に対応するため、交感神経が優位になりっぱなしになり、相当量のエネルギーが消耗されるため、「疲れ」や「だるさ」を感じやすくなります。
移動性高気圧が次々にやってきて低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わるこの時期、自律神経の切り替えがうまくいかなくなりがちです。また、低気圧になると、血中の酸素濃度が下がり、昼でも眠くなったり、身体がだるくなったりします。
春は、卒業、入学や進学、転勤、異動、育休後の復職など、自分や身のまわりの生活が大きく変化する季節。さらにこの春は新型コロナウイルス感染への不安や、外出自粛などの環境変化からストレスを感じている人も多いでしょう。知らず知らずのうちに緊張感やストレスが生じることで自律神経が乱れ、春バテしやすくなります。
今回の調査では、女性は男性より「春バテ」を感じる割合が高いという結果が出ています。これは、男性に比べて女性のほうが、春バテの症状が出やすい傾向にある冷え症の人や、もともと体力がない人が多いことが要因と考えられます。
ここで、そのほかにも「春バテ」になりやすい人の生活習慣をお教えします。現在の生活習慣を振り返ってみましょう。
2つ以上当てはまった方は、「春バテ予備軍」かもしれません。対策をしっかりして、春に備えましょう。
「春バテ」の原因の1つである寒暖差。2019年の気象庁データによると、3月下旬には、最高気温が1週間の中で激しくアップダウンする週が連続しています (グラフ④)。
また、2019年に1日の中での寒暖差(最高・最低気温差)が10℃以上あった日数は、3月から5月の期間に集中しており、とくに4月は季節外れの降雪などの影響もあり、10℃以上の寒暖差が月の半数を占める厳しい気候であったことがわかります(グラフ⑤)。
また、今回の調査で、2019年の春に「寒暖差が身体にこたえる」と感じた人は約6割にも及びました(グラフ⑥)。2019年から2020年にかけては暖冬傾向でしたが、油断せず、春に備えましょう。
「春バテ」に負けないために、1日のルーティンの中にかんたんな対策を組み込んでみては? シーン別に3つの対策をご紹介します。
目もとには自律神経が集中しているため、蒸しタオルなどで目もとを温めることで副交感神経が優位になり、リラックスできます。手や足の皮膚温が上がり、身体の熱が外に逃げる「放熱」が促進されるため、寝つきがスムーズになるのです。心地よいと感じる40℃程度で目もとを温めてみましょう。
眠る前のスマートフォンは交感神経が活発になってしまうため控えめに。
炭酸ガス入りの入浴剤を入れた38~40℃のお湯に10~20分つかります。
炭酸ガス入りのお湯は、末梢の血管を拡張して血流をよくするため、短時間で身体を温めることができます。また、「春バテ」特有の不調である身体の疲れやだるさの改善にも繋がります。
寝る前にぬるめのお風呂に入って、じっくりと身体を温めながら、副交感神経を優位にすれば、寝つきもよくなります。
なお、熱いお湯での入浴はリラックスの妨げになるので避けましょう。
外気の寒暖差だけでなく、室内外の温度差も身体に大きく響きます。しかも、「寒い!」と感じた瞬間には自律神経が乱れてしまうのです。
首、手首、足首を外気にさらさないようにしておくことはもちろん、血流が多く、太い血管のある、首、腰、お腹、太ももは、温熱シートなどであらかじめ温めておいてから外出するとよいでしょう。
また、気温が上がってくると、いち早く春のファッションを取り入れたくなりますが、ストールやカーディガン、温熱シートなど、寒さを防ぐアイテムを常に携行しておけば、大いに役立つでしょう。
<意識調査概要>
調査方法 : インターネット調査
調査期間 : 2020年2月13日~2月18日
調査対象 : 首都圏の20歳~59歳の男女 821名
調査内容 : 春の不調に関する意識調査